放送作家の文章術④特定の個人を想定して書く

放送作家の文章術④特定の個人を想定して書く

テーマを絞り込む方が、書きやすいと述べました。絞り込んだほうがいいのは、ターゲット層についても同じです。

読者の年齢、性別はもちろん、主婦なのか、会社員なのか。会社員であれば、地位はどのあたりなのか。どういう趣味や嗜好を持っているのか、など細かく想定すればするほど、文章は書きやすくなります。

ずばり特定の個人をイメージするのもありです。周りにいる友人や家族、あるいは学生時代の友人でも構いません。

そのうえで、その人に個人的な手紙やメールを書くつもりで書いてみてください。

相手の顔が浮かべば、あなたの伝えたいことを、どんな言葉でどんなふうに伝えればよいかが、驚くほど考えやすくなります。

電話でその人に話すつもりで、考えをまとめても構いません。

直接話す場合ならば、身振り手振りや表情などで表現をカバーできますが、電話では言葉がメインです。

あるテーマを、その人に音声だけで話すならば、どんな言葉でどんな順番で話せばより伝わるか、考えるのです。

想定読者と対話しながら書き進める

最初に読者を想定しておけば、このあとに行う作業、「全体の流れを考える」際も役立ちます。素早く全体の流れを決めることができるのです。

なぜなら全体の流れは、「読者との対話」によって、決めるものだからです。

全体の流れ、つまり構成は「こういうことを書いたら、読者はどのように感じるだろう」と想像しながら作っていくものです。

たとえば「こういう謎振りをすれば、読者は〝それはどういうことなのだ?〟と思うはずだ」と想像する。そのタイミングで「実は…」と謎解きを持ってきます。

あるいは「こういうことを書くと読者は〝でも、一概にそうとは言えないだろう〟と反発するはずだ」と気持ちを想像する。その上で「もちろん異なるケースもある。しかし~」と続ければ、対話が進みます。

「読書とは著者との対話である」と言われます。もし著者が読者の気持ちを想像しながら書いていなければ、その対話も成立しません。

文章に限らず、あらゆるコミュニケーションにいえることですが、すべては「相手がどう受け取るか」で決まるのです。