放送作家の文章術⑫全体の流れをつくってみる

放送作家の文章術⑫全体の流れをつくってみる

情報の整理だけで、流れを作ることが出来なくても、あらためて材料を並べ直すことで「流れ」を作ることができます。この「流れ」を「構成」といいます。

放送作家は「構成作家」と呼ばれます。つまり材料を整理して並べ、「流れ」を作るのが仕事です。

そのノウハウは、文章の構成にも役立ちますので、ぜひ参考にしてみてください。

テレビ番組で、情報を整理して構成をする際には「箱書き」と呼ばれる作業をします。

やり方はとても簡単。整理した材料を大きめの付箋にサインペンで書いて、壁やホワイトボードなどに並べていくだけです。

この段階では、頭に浮かんだことをなるべく早く、文字化することが重要です。ですから私は資料の中で気になった情報や、そこから感じた思考の断片を、滑りのいいサインペンで付箋に書いています。

また私の場合、ノートに貼り付けておいた付箋を直接、ホワイトボードに貼り替えることもあります。これも「付箋ノート」の便利なところ。

もちろん付箋ノート上でやってもかまいませんが、広く全体が見えたほうが大きな流れがつかめます。

付箋なら簡単にはがせますので、並べ替えも自由自在です。

これをやると、ストーリーの起伏や伏線の配置、カットすべき冗長な部分などがわかるため、テレビの世界では、みんなで「こうしたほうがいい」など、自由に意見を言いながら箱書きを作り、それを構成作家が台本に仕上げます。

テレビ番組を作るときのこの手法は、まとまった長さの文章を作るときにも大いに役立ちます。

整理した材料を付箋に書き出し、「しっくりくる」順番に並べ替えていくだけで、ざっくりとした全体の流れを作ることができるからです。

たとえば「今度のオリンピック開催で東京はどう変わるのか?」をテーマにしてテレビ台本を書くならば……

1,2016年の五輪で、リオデジャネイロはどう変わったのか?

 ↓

2,東京と同じく、成熟した都市で戦後2度目の五輪が開かれた、

前回2012年のロンドンはどう変わったのか?

 ↓

3,東京は今、どう変わろうとしているのか?

~といった、ざっくりとした3つの「箱」を作ります。

そこに、集めた材料を書いた付箋を貼り付けていって、整理するのです。

  最近では、パソコンやスマートフォンで使える、付箋アプリもあります。そうしたアプリには、写真や動画も貼り付けることができます。

それらを使って、フィールドワークで撮影した写真や動画を貼れば、臨場感ある文章も書けます。まさに構成の強い味方です。