放送作家の文章術⑯「本論」にもパターンがある!

放送作家の文章術⑯「本論」にもパターンがある!

先ほど書いたように、文章の7~8割を占める本論にも「流れのパターン」があります。

ここからは、本論での代表的な材料の並べ方を紹介していきます。

どれかを選んで材料を置いてみてください。

難敵と思われていた本論のアウトラインが、驚くほど簡単に出来上がります。

本論を「時系列」で並べる

「時系列」とは、もっともシンプルな並べ方で「時間の流れに沿って書く」ことです。

・朝 → 昼 → 夜

・昨日 → 今日 → 明日

・先月 → 今月 → 来月

・去年 → 今年 → 来年

・最初にやること → 次にやること →3番目にやること

テレビドラマでも、時間の流れが前後すると、ストーリーがわかりにくくなりますので「時系列」に従って展開するものがほとんどです。

説明や報告でも、時間的な順序に従った話は、話の流れに無理がないので、読者はスムーズに内容を理解することができます。

ただし「時系列」は流れが単調になりがちです。

ですから、序論で読者をしっかり掴んでおいたり、ある時間で流れが一転するような山場を用意したりすることが、このパターンでは重要です。

単純な時系列でなく、時間の流れに変化を付けると構成にもメリハリが出ます。

時系列の「過去」と「現在」を逆さにして…

現在 → 過去 → 未来

~とする流れです。

この「現在・過去・未来」の流れは、映画の構成にもよく使われています。

例えば「スタンド・バイ・ミー」や「タイタニック」がそうです。映画は「現在」から始まり、「過去」のできごとが展開し、最後はまた現代に戻ったうえで、「未来」を予感させるシーンで幕を閉じます。

「現在・過去・未来」の流れは、誰でも文章や話に「時間的な動き」をつけることができるテクニックです。

自己紹介の文章や自分史を書くときなど、「私は〇〇年にどこどこで生まれ……」と始めがちです。

それよりも、今の状況を述べたあと(現在)、過去にさかのぼって生い立ちや学生時代のことなどを紹介して(過去)、今後目指すもの(未来)」を書ければ、より読者の印象に残る文章になります。

放送作家の文章術本論を「大状況・中状況・小状況」で並べる

テレビの海外ドキュメンタリーの映像を思い浮かべてみてください。

たとえば「マサイ族の村に暮らす日本人」をテーマにしたドキュメント。その映像はまずマサイ族が暮らす、サバンナの広い映像からスタートします。

その後、マサイ族の集落の映像が続き、その暮らしぶりを紹介したあとで、その中に暮らす日本人にフォーカスするはずです。

つまり「アフリカのサバンナ」といった〝全景=大状況〟を映し出し、それから「マサイ族の集落」といった〝近景=中状況〟に移り、最後に登場人物である「この村に暮らす日本人」、〝核心=小状況〟へと絞り込んでいく手法です。

映像に限らず文章でも、この構造をとると受け手の関心が徐々に絞り込まれるために、伝えたいことが伝わりやすくなります。

この流れは、「多くの人が関心を寄せる状況」から、よりピンポイントなテーマに移行するときに、有効な手法です。

あまり周知の事実ではないテーマを伝えたいときなどでも、多くの人に共感してもらえる大状況から入れば、あなたが伝えたいピンポイントのテーマに、フォーカスさせることが可能になります。