放送作家の文章術⑳締め切りを設定する

放送作家の文章術⑳締め切りを設定する

それでも書き始められない人は、「締め切り効果」を利用しましょう。

「締め切り効果」とは心理学用語で、期限の直前になると普段よりも高い集中力を発揮することを意味します。

多くの人が子どもの頃、夏休みの宿題を8月末になって、一気に片付けることが出来た経験を持っているはず。あの集中力です。

放送作家であってもライターであっても、締め切りがなければなかなか執筆には取り掛かりません。やはり締め切りがあるからこそ書き始めます。

そうであれば、締め切りを前倒しにしてしまえば、当然、書き始めるのも早くなります。

ですから本当の締め切りよりも早い時期、今すぐに書き始めないと、絶対に間に合わない日付を締め切りとして設定してみましょう。

期限が短くなって、もはや執筆し始めないと締め切りに間に合わない。

そう考えれば、少々気分が乗らなかったとしても書き始めるしかありません。

とはいえ人間は、自分には甘いもの。自分で決めた締め切りが守れるとは限りません。

しかし、この本のルールで執筆するあなたは、早めの締め切りを守らざるを得ません。

なぜなら「6割の出来でいい」と、考えて書くからです。

6割の出来の文章など、とうてい人様にお見せできるものではありません。

最初に「考える4:書く:4:見直す2」の配分で仕上げましょうと提案しました。

6割の出来でいいと考えて書いた文章は、見直して書き直したり、書き足したりする時間が、どうしても必要になるのです。

見直す時間に2割を当てるならば、本来の締め切りよりも早めに、第一稿を仕上げなければなりません。

その期限が、自分で決める「セルフ締め切り」です。

セルフ締め切りは、いつもの2割、いえ余裕を持って3割は早めに設定しましょう。

「6割でいい」と考えることは、書き出しのハードルを低くします。それだけでなく、期限を早めで締め切り効果を発動させて、強制的に書き出させるものでもあるのです。

書き始めるから、書けるようになる!

とにかく書き始めましょう。書き始めれば、書けるようになります。なぜなら書き始めれば、テーマについて真剣に考えはじめるからです。

書き始めれば、アウトラインは変わると書きましたが、それは実際に書き始めると、真剣に考えざるを得なくなり、どうしても構成が変わってしまうからです。

真剣に考え始めるためのスイッチ、それが書き始めることです。

書き始めたら、アウトライン=ロードマップを頼りに、執筆するだけです。

ただ、それでも途中で行き詰まってしまうかもしれません。そういうときも、原稿と向き合う態度が必要です。

たとえば、そこまでに書いた文章を見直して、誤字脱字などを直してみる。意味の通じない部分の言い回しを書き直してみるなどしてください。

そこまでの文章を見直しているうちに、次に書くべきことが見えてくることはよくあります。

また一旦作業を中断するときは、キリのいいところで終わらないようにしてください。

頑張って、このブロックだけ仕上げてしまおうと考えないで、途中で中断しておくのです。

すでに終盤まで来ていたら、そのブロックを終わらせて、次に書く項目の出だし部分だけでも書いておきます。

ゼロから、それまでと内容の異なる新しいブロックを書き始めるよりも、流れの途中で中断したほうが、再起動するときに続きが書きやすくなります。